第33回 京都市・京都ちーびず布の文化セレクション

 地域力ビジネス応援カフエが6月10日(金)ルビノ堀川で開催され、90名の参加がありました。京都各地域のちーびず関係者や布の関係者、府職員に加え、中小企業診断士がチームを組み、合計11チームで「布の文化のストーリーを伝えて買ってくれる共感者をつくる・増やす」をテーマに意見交換がなされました。また、27の団体の布関係の展示があり、大いに賑わいました。

1.山田知事挨拶

 地域の力を活かすことで今までにない仕事ができるのではないかとのお話。その要旨は以下のとおりです。
 昔は有名で大きな企業による大量生産で市場が占められていたが現在は2つの要素で変化している。
 ①ネットの発達による地理的、資本的な制約の減少。
 ②観光分野に見られる3つのキーワード「今だけ(この瞬間)、ここだけ(そこにしかない魅力)、あなただけ」。
 独創性が地域ビジネスを発展させる要素である。そして通信と結ぶことで飛躍できる大きな機会に繋がる。ネットや多様な業界との交流を通じてワンランクアップの商品に繋げてほしい、とのことでした。


2.丹後藤織り保存会・井之本会長による藤織りの魅力が伝わる講演

 丹後藤織り保存会では、技術の保護や藤織りを通じた地域文化の発信を行っています。藤織りは山に自生する藤づるの皮をはいで糸にし、織ったものです。山着や畳の縁など日常生活に使われていましたが、木綿の普及によりその姿を消し宮津市上世屋地区では数人のおばあさんたちによりその技術が伝えられてきたそうです。「藤織りは木灰や米ぬかなど、その工程の中で必要なものは全て生活の中で調達されており、おばあさんたちの暮らしの知恵が凝縮されている。
 過疎化と高齢化による技術の伝承が危ぶまれる中、藤織りが持つ物語を伝え面白いと興味を持ってくれる人を増やし、伝えていきたい」と語られていました。


◆グループ意見交換会レポート4班

 4班では、布をテーマにちーたびを考えてみました。蚕を飼育して糸をつむぐ。つむいだ糸を染めて織物にする。そして、作品に仕上げる、と多くの事業者の間を渡り歩きながら、手間と時間をかけて作り上げられるものが今回のテーマである「布」ということになります。この糸が生まれ、布から製品へと形を変えていく作業の工程に沿って、いくつかの事業所を回り、それらの作業を実際に自分でも体験しながら、参加者もひとつの作品を作り上げていく、そんなテーマの旅を考えてみました。この旅を実現させるためには、いくつもの事業者の方と連携することが必要です。4班にはそんな連携のできそうな方の集まりでしたので、実現の可能性は高いと思います。
 そして、もうひとつのアイデアとして、蚕がかわいい、蚕が作る繭が綺麗だという意見があり、子供たちが蚕を育てるためのキットがあればいいな、という意見がでました。
 4班メンバーの一人、塩野屋さんでは既にそんなキットを販売されているそうです。メンバーから出されたアイデアには、そのキットで作られた繭を送り返してもらい、それを糸にすることで、糸から作品にするなどのサービスや、蚕を飼育する子供たちなどに飼育日記をつけてもらいSNSなどを使って、より多くの人にそんなサービスの存在や糸ができるまでの自然の神秘的な仕組みを知ってもらえるようにしていくといったアイデアも出ました。今日出たアイデアが今後のサービスや事業としての実現にぜひつながってほしいと思います。
   【文責】一般社団法人京都府中小企業診断協会 柿原 泰宏


◆グループ意見交換会レポート 5班

 5班は、「染め」「織り」「加工」と「布」を扱った地域ビジネスに取り組む方々が多く、冒頭の自己紹介で印象的だったことは、京都ならではの「布の文化」、忘れてはいけない「日本の伝統」、若い人たちに伝えていきたい「布の物語」など、それぞれの想いは違うものの、それぞれが考える社会的な課題をご自身のビジネスを通じて伝えていきたいという強い想いです。一方で、それぞれのビジネスの課題も共通していました。その想いをどういう方法で伝えれば良いのか、さらに伝えて売るにはどうすればよいか、です。
 そして意見交換をしていくうちに、ひとつのキーワードが出てきました。それは「体験」です。体験をすることで、その背景や物語、伝統などの見えない価値に気づくことができます。中学生が友禅染め技法の体験を通してその価値に気づいてもらったという事例や、西陣織のポーチを作るワークショップを通して作る楽しさを味わってもらえた事例などが紹介されました。
 今後具体的に「体験」を誰にどうやって広げて行くかについて、実践をしながらそれぞれに見つけられることを期待します。

  【文責】一般社団法人京都府中小企業診断協会 湯川 俊彦

◆グループ意見交換会レポート 8班

 8班は、柿渋ジャム生地の馬渕實様と宮津の藤織り、上世屋地区を良く知る橋本和美様がメンバーであり、ともに十分・見ていただくと満足いただける面白さ・そこに至ったSTORY性を秘めているということでいかに伝えるかというデイスカッションになった。
①その手法で注意することとして「売れるコンセプトとしてうまく言葉にするべき」「驚いてもらう仕掛けが必要であり、効果的である」
「宮津の上世屋地区には、丹後藤織り保存の関連の交流館や、体験教室の実施、棚田の風景など、見ていただくだけでストーリー性はあるのでどのようにして誘引するかがポイントである。特に外国人には特別な配慮が必要である」
「高年齢技術者には文化を継承しなくてはいけないとの気持ちがあり、それそこが素晴らしいストーリーとなる」
②伝える時の考え方としては、
「交通整備によるマーケットの変化に対してもっと危機感をもつべき」
「布の文化と言うからには従来の縦の製法に捉われず、広く捉えること、各織り技法のクロスオーバーが大切である。
井之本氏のセミナーには十分にそれが感じられた。」
などの意見が交わされた。

  【文責】一般社団法人京都府中小企業診断協会 西河 豊

◆グループ意見交換会レポート9班

 9班の参加者の内4名は、「手作りの子供服製造・販売」、「ちりめんを使った浴用タオル等新商品の開発」、「手機織機による相楽木綿の製作」、「自分にあった高さに調整できるオリジナル枕の開発・販売」を通じて、「布の文化」の普及に携わり、それぞれが、こだわりを持って、意欲的に「ちーびず」に取組んでおられます。

「手作りの子供服製造・販売」では、材料の生地を自分で仕入れ、ミシンで手作りし、手作り市や手作り専門サイトを通じて販売しているとのこと。
「ちりめんを使った浴用タオル等新商品の開発」では、生活様式の変化に対応し、新しい用途に対応した「ちりめん の新商品」を開発した。最近、テレビで丹後地域が取りあげられたこともあり、広い地域の生活者から反応があるとのこと。
「手機織機による相楽木綿の製作」では、関西文化学術研究都市の精華町にあるけいはんな記念公園の中に立地する「相楽木綿伝承館」で、先生の指導を受け伝統技術の習得・向上に努めているとのこと。
「布」関係ではではないが、自家農園で栽培した野菜(妻担当)とレトロな商品(駄菓子・ブリキの玩具等、夫担当)を一つの店で、併売している事例も紹介された。

 このような交流の中で、最近、外国人による着物ツアーが流行し・京都市内で着物レンタル店が急増しているが、派手さ好みが中心で、「本物」の日本文化があまり理解されていないので、「本物」の和装文化を紹介する外国人着物ツアーを企画すればいいのではないか(関連する和装小物の販売も期待できる)というアイデアや「京都の布の文化」などを紹介し、販売もできる公的なサイトが欲しいとの要望も出されるなど、コラボレーションによる「布の文化」普及拡大の気運が生まれ、今後のちーびず活動での展開に繋げることが期待されます。
  【文責】一般社団法人京都府中小企業診断協会 金田 修

◆グループ意見交換会レポート10班

 10班では、古着物をバッグや小物、洋服にリメイクしている方や染物作家の方がおられ、双方をつなぐコラボレーションのほか、「価値を伝え、体験する」や、「産学交流」をキーワードに、次のような案が出されました。
①「コラボレーション」
古着物を解体してリメイクする際に、生地にシミ等があると、その部分は使えないが、その個所を染色の技術を使って柄で目立たなくすることができる。そうすることで、生地を無駄なく活用することができ、デザイン的にもアクセントになる。
②「想いやストーリーを語り、価値を伝える」「体験する」
古着物の生地は、購入することもあるが、個人のお宅に眠っているものを貰うことも多い。新品では手に入らない生地そのものの魅力もあるが、持ち主の思い入れのあるものでもあるので、リメイクしたら何か一品作品を持ち主に返すようにしている。これが非常に喜ばれるそうである。このような持ち主と製作者の想いやストーリーを語る場を設けることで、集まった方々に「布」に関する興味を持ってもらうきっかけになるのではないだろうか。同時に、参加者も何か古着物の生地を使って何かを制作する体験をしてもらってはどうか。
③「産学の交流」
美術大学や芸術大学の授業の一環として、工房などを見学してもらい、学生と交流することで伝統産業に対する理解をより深めてもらうとともに、創作活動の場としても活用してもらい、新たなアイデアや展開が生まれるきっかけになればいいのではないか。

  【文責】一般社団法人京都府中小企業診断協会 梅林 守

◆グループ意見交換会レポート11班

 11班では展示販売ブースに出店されている彼方此方屋さんと黒谷和紙協同組合さんがおられたことから、両社の物語の伝え方をお聞きするとともにその実践アイデアについて話し合いました。着物販売をされている彼方此方屋さんでは、「着物を日常着として使ってほしい」との想いから手入れの気軽さをPRしたり、着付け教室などを行っているそうです。また洋服は捨てられるが着物は思い入れが強く捨てられないという方が多いそうです。そんな方には古着を裂き織りにしてブックカバーやバッグなどのリサイクルもされており、プレゼント用にはAR技術を用いたメッセージのサービスも行われているそうです。黒谷和紙協同組合さんでは黒谷和紙会館や黒谷和紙工芸の里で工程の見学や手漉き体験、京都テレビによる紹介などで昔ながらの製法を紹介されているそうです。実践アイデアとして、ちーたびでは①綾部にある黒谷和紙の工房の見学②京都市内で着物とのコラボイベント③農村・山村で紙布や樹皮を原料にした日常着をテーマにしたツアーなどの意見がありました。またマルシェでは裂き織りや紙布を用いたコラボ商品の意見も出されました。冒頭の知事の挨拶にもあったように、今後も他の業界との交流を通じて新たな商品やビジネスに繋がることを期待しています。

  【文責】一般社団法人京都府中小企業診断協会 鬼頭 靖彦

【問い合わせ先】 京都府地域力ビジネス課(京都府ソーシャル・ビジネスセンター) 電話075-414-4865

 

京都ちーびず(京都地域力ビジネス)