(特定非営利活動法人)障碍者芸術推進研究機構
~天才アートがやってきた!~
「天才アート」とは、近年、障碍のある人の表現能力、特に美術的な内容についての注目度が世界的に高まってきたことにともない、それらの優れた感性と表現力、そこから湧き出る独創的な作品に対してネーミングされたものです。今回、障碍者芸術推進研究機構で活動するアーティストたちの活躍の場をさらに広げ、作品デザインを活用した製品を開発するための、より有効な提案の仕方やノウハウについてのハンズオン支援の依頼がありました。
1.障碍者芸術推進研究機構の活動状況
京都においては、障碍のある児童生徒・市民の美術活動における作品を展観する場が早くから設けられていましたが、総合支援学校などにおける制作活動の活発化により、隠されていた能力がどんどん開花していく状況が生まれたこともあって、多様な美術表現に取り組み、学齢期から成人後も持続的に活動できるような場を確保する必要があるとの声が高まり、平成22年に同機構が結成されました。
その後、平成24年9月には東山区の元新道小学校校舎内に天才アートミュージアム新道アトリエが開設され、休日制作会の場でアート制作活動が展開されるようになりました。
現在は、所属アーティストも三十名以上となったため、平日にも制作日を設けて、より多くの作品を生み出せるような環境を整えているほか、専用の作品撮影用スタジオを開設し、高精細画像でのアーカイブ化を進めています。
現状ではネットショップでクリアファイルやポストカードなどの販売を行っていますが、今回このアーカイブ化された作品をベースに、デザインを活用した企業などとの商品製作コラボや作品の販売・レンタルなどの事業を展開し、アーティストたちの自立を支援していこうと考えているため、マーケティング手法や事業戦略の考え方などについてご説明後、意見交換をしました。
障碍者雇用への社会的関心が高まるなか、表現力や芸術的才能の豊かなアーティストたちに、雇用形態とは違った形で活躍の場を与えることは、非常に意義深いと考えられます。
2.発展の方向性と今後の取り組み
企業コラボによる製品へのデザイン採用に関しては、天才アートは一般的な商業デザインと異なり、発注者の細かな注文に応じて制作することは得意でなく、アーティストの自由な発想が重視されるプロダクトアウト型製品となるため、マッチングが難しい側面があります。
したがって、まず高精細画像を額装した作品を販売・レンタルする事業モデルを先行して確立し、社会福祉的な理解の深い病院や介護施設、CSR意識の高い企業などへの納入を通じて、作品を展示していただくことが必要と考えられます。そのためには、適切な価格を設定し、販路開拓によって安定的な取引先を確保していくことが課題となります。
数多くの施設や企業での展示が実現すれば、一般の方々の目に触れる機会も増え、同機構の活動に対する認知度を向上させることができ、さらにアーティストの活躍の場を広げ、自立への一歩を踏み出せることが可能になると思われます。
●平成28年2月4日掲載 【文責】一般社団法人京都府中小企業診断協会 藤村正弘