京都ちーたび参加通信
<直売所から始まる山城のええとこめぐりシリーズ 宇治田原町編>

 11月22日(日)宇治田原町の農産物直売所「宇治茶の郷」坊正信会長のガイドから始まった山城ちーたび。
 ①拠点となるJA やましろ農産物直売所「宇治茶の郷」の紹介
 ②ブランド京野菜「みず菜」生産者・西川さんのハウスでお話と収穫体験
 ③宇治茶生産者・下岡さんから特産「古老柿づくり」のお話と体験
 ④地元女子らのグループ「ほっこりーふ」作の旬の野菜弁当の昼食
 ⑤下岡さんガイドでお茶の淹れ方体験
15名の参加で盛況!京都市内、京都府南部はもとより、大阪からの参加者も。

1.宇治茶のふるさと宇治田原の魅力!

 爽やかな秋晴れが広がった日曜日の朝、2007年にオープンし、今回の拠点となるJAやましろ農産物直売所「宇治茶の郷」から、ちーたびがスタートしました。
 宇治田原町は人口約9,600人で、京都府の東南部に位置し、滋賀県にも隣接しており、738年地元の永谷宗円が「青製煎茶法」を考案したことで、ここからお茶文化が日本全国に広がっていった「日本緑茶発祥の地」です。
 また、丘陵に囲まれた傾斜地が多いこともあり、古くから農業が盛んで、お茶のほかにも、京みず菜や古老柿など日本中に誇れる一流品が宇治田原で作り出されています。
 今回、総合ガイドを務めていただいたJAやましろ農産物直売所連絡協議会会長の坊正信さんの「常に食の安心安全という視点を忘れず、生産に励んでいる」という言葉が印象的で、今回のちーたびを通じて、京都・大阪・奈良市内のいずれからでもクルマで1時間以内の地にありながら、農業の伝統が脈々と受け継がれ、豊かな自然環境に恵まれた「ええとこ」であることが、再発見できました。

2.京みず菜収穫と古老柿(ころがき)作りを体験!

 最初に訪れた西川芳次さんの農園では、水菜収穫を体験しました。京都人にはなじみのある水菜ですが、宇治田原でハウス栽培される水菜は通年収穫可能で、柔らかく苦みが少ないのが特徴で、生食に適しており、特に品質を厳選された商品だけに貼られている「京のブランド産品」マークのついたプレミア品として全国に出荷されています。
 西川さんからは「温度や気候によって播種後収穫までの日数を変え、パソコンで管理している」との説明があり、こうした細かい栽培ノウハウが品質を支えていることがわかりました。
 次は宇治茶の郷に戻って、下岡久五郎さんの指導で古老柿(ころがき)作り体験。古老柿とは日本で一番小さい「つるのこ柿」という渋柿を自然乾燥した宇治田原特産の干し柿で、あんぽ柿などと違って、ヘタを切って干すのが特徴ですが、今がちょうど準備シーズンにあたります。
 下岡さんは、柿農園主であるとともに、天保年間創業の老舗茶園の茶匠でもあり、「昔から柿とお茶は同じ場所で栽培され、柿渋が茶壺の防水・防虫機能を果たす一方、干し柿がお茶菓子の始まりだった」という、柿とお茶の深い関係を教えていただきました。
 干し柿はカリウムなど栄養分が豊富で、向いた皮も薬品原料や漬物の自然着色に使うなど、捨てるところがないと言われています。
 つるのこ柿の皮をナイフで剥いて、間隔を空けながらタコ糸で結んでいくという作業でしたが、参加者は悪戦苦闘しながらも、見事な出来映えを披露しました。その後の干し方なども教えていただき、各自食べごろを楽しみに持ち帰りました。
 なお、商品としての古老柿は毎年「事始め」の12月13日に合わせて出荷されます。

3.地元旬野菜と玉露を味わう!

 ここで早くも昼食の交流タイム。「ほっこりーふ」さん(JA女性部加工部)心づくしの大人気「旬の野菜弁当」が登場しました。水菜・はやと瓜・人参・子芋・大根など地元素材満載のヘルシーメニューで、「野菜本来の甘味がある」「野菜を知り尽くした人の味付けですね」などの声も上がり、参加者同士も打ち解けて、同席されたガイドさんも含め、あちこちで交流の様子がうかがえました。
 そのせいもあってか、昼食時に配られた他のちーたびの案内チラシを見て、参加者の方々からは「次はこれに参加しようよ」「こっちも面白そう」と誘い合う光景も見られ、だんだんとリピーターも増えていきそうな予感です。
 午後はお茶の淹れ方体験で再び下岡久五郎さんが登場。宇治田原で始まった日本緑茶の歴史を語っていただいた後、下岡さんの丁寧なアドバイスにしたがって淹れた玉露の一煎目は、「こんな甘さとコクは味わったことがない!」「味が深い!」という歓声が起きるほどの至福の一杯でした。次に少し温度を上げたお湯でいただく二煎目は一煎目と違い、まろやかさが際立ちました。そして最後は、茶葉にポン酢をかけて食べるという食茶まで教えていただきました。お茶に溶けないベータカロチンやビタミンEを摂取できる効果もあるそうで、やはり上等のお茶は食べてもおいしい!
 老舗の茶匠直々に教わるという滅多にない機会に恵まれ、大満足の時間でしたが、特に、「最近、コーヒーなど飲むときでも"お茶する"という言葉を使うが、これは単に飲み物で喉を潤すことではなく、団らんによって心を潤すことを意味しているのだ」という下岡さんの言葉が心に残り、昔から人間関係の潤滑材として使われてきた一杯のお茶が持つ力を再認識し、改めて日本茶が日本文化に与えた影響を考えることができました。
 最後には、「地元野菜詰め合わせセット」のずっしりと重いお土産までいただき、お腹も心も満たされて帰路につきました。

3.今後に向けて

 空き時間やちーたび終了後に多くの参加者が直売所で地元野菜を購入されていたのを見て、これは今回のちーたびで宇治田原の豊富な農業資源を再認識した結果であり、満足度が極めて高い企画であったことを実感しました。
 一方で、平成27年4月に『日本茶800年の歴史散歩』~京都・山城~が日本遺産(Japan Heritage)に認定され、宇治茶の評価がますます高まるなか、宇治市などに比べると、日本茶のふるさとである宇治田原の認知度は必ずしも高くありません。
 豊富な農産物や交通の意外な至便性も含め、潜在的な魅力を秘めていることは間違いないので、今後は、より多くの方に知っていただくため、情報発信力をいかにして高めていくかが課題になると思われます。
 最後には、「地元野菜詰め合わせセット」のずっしりと重いお土産までいただき、お腹も心も満たされて帰路につきました。

  ●平成28年2月4日掲載 【文責】一般社団法人京都府中小企業診断協会 藤村正弘

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