ひとつのおさら
~季節のつくり手がみえるおばんざい食堂~
烏丸丸太町から近い職住共存地区に付近のサラリーマン・OLや地域の方々で賑わう「食堂」があります。カブの描かれたシンプルな暖簾が町並みにもしっかり馴染んだ心地いい空間、店頭では京都で採れたお野菜も販売されています。代表の西村和代さんは、京都でカラーズジャパン株式会社を経営され、食と農の体験学習や学びあう場をつくることを行ってきました。その経験から、そういった関心を持っていない人達にこそアクセスしたい、そのためには「日常の食事」からでないかと思い立ち、町家をリノベーションしたちょっと日常よりいいものを提供する食堂をオープンしました。
1.「ひとつのおさら」の運営状況
2014年5月にオープン。西村さんご自身が運営していた「さいりん館」(室町二条)から近いところの物件をリノベーション。「さいりん館」でもお野菜を販売されており、お野菜を仕入れる人脈もお持ちでした。京都の農産物として食材と出会える場としての食堂です。特にお野菜に限れば京都産のものを80%~90%を使っており、時にはスーパーで売られていないような限られた野菜も使われていたり販売されています。ご飯もおくどさんで炊かれています。でも、有機野菜をメニューや張り紙でアピールしたり食育を全面に出して説明をしたりするわけではありません。スタッフは聞かれたら応えれるように分かっているそうです。じわりじわりといいものを提供していきたいという代表の思いです。
不定期で日曜日に「ひとさら市」を開催しています。隣のガレージと店内を使い、農家さんがお野菜を持ってきて売っています。有機野菜やおばんざい、手作りケーキなども販売します。出店料は頂かず、自らもおばんざいやおむすびなどを販売するので、普段のランチはわざわざ食べに来られないご近所の方にもお店に来て頂くきっかけとなっているそうです。職住共存の地域で会社員のランチから近所の方のお野菜の買い物、そして農家さんとのつながりで、京都の農産物とつながるという「ひとつのおさら」の存在そのものが地域に「じんわりと」浸透していっていることを感じました。
2.食をとおして次のプロジェクトへ
代表の西村さんは、食と子どもの居場所をつくっていくために、新たな団体を立ち上げます。地域課題として、子どもの居場所と食環境の改善を考えています。塾通いの子どもが塾でお弁当を食べていたり、働く親の子どもが家でひとりで過ごしコンビニで買ったもので済ませていたりすることがあります。親向けに「手早くできる晩ごはん教室」も実施予定です。食堂のスタッフには、食育や子どもに関心のある大学生スタッフが、近所のお兄ちゃん、お姉ちゃんとしてプロジェクトの運営メンバーとして入っています。他には近隣のパパ・ママやお花の先生などと連携して進めていく予定です。プレイベントとして広報を開始されており、体験プログラムや親へのアプローチを行う予定ですが、継続的に運営できる仕組みづくりが大切です。
●平成27年12月25日掲載 【文責】一般社団法人京都府中小企業診断協会 阪本純子