第77回 京都ちーびず応援カフェ
~「暮らしの防災」&「動画を活用しよう!」~ in ルビノ京都堀川
12月20日(木)、第77回の京都ちーびず応援カフェがルビノ京都堀川で開催されました。ちーびず実践者や推進員、京都府地域力ビジネス課など約60名が集まり、「暮らしの防災」についての講演や学生による作成動画の試写会、約20の出展者の試食販売交流会、8グループに分かれての「ちーびず、ここが楽しい!」をテーマとする意見交換会などが行われました。
1.講演「ちーびず的防災の備え」について 株式会社カスタネット 代表取締役社長 植木 力 さん
地域力ビジネス課長友理事の開会挨拶の後、植木力さんより「ちーびず的防災の備え」についての講演がありました。植木さんが代表を務める株式会社カスタネットはオフィス用品や企業向け防災用品などを販売していましたが、東日本大震災や熊本地震を機に、被災地へおもむき、100名を超える被災者の方へのヒアリングに基づいた、普段使いできる防災グッズを開発、商品展開を行っています。今後数十年以内に大震災が起こると言われている中で、若い人たちにどのように意識をつけてもらうかを課題と感じ、それをビジネスを通じて解決しようとする姿勢はちーびずそのものだと言います。
2.学生2名による動画試写会 協力:NPO法人グローカル人材開発センター
続いて、京都で学ぶ大学生が4つのちーびず団体を推進員と一緒に訪問し、学生ならではの視点で作成した動画の試写会がありました。進行は、この企画を発案・協力したNPO法人グローカル人材開発センターの仲田さんが行い、学生2名との一問一答のやりとりに会場は賑わいました。仲田さんからは取材前後でのイメージの変化、ちーびず団体のどこに魅力を感じたか、動画で伝えたかったことなどの質問や、また、取材を受けられた京都かめよしと丸仙株式会社からもコメントがありました。学生からの「自社商品への愛を感じた」、「工場ではいろんな職人さんがかかわっていることが分かった」、「京都は自然が豊かなことは発信できていないと思った」などの感想が印象的でした。その後、植木さんからも自社での動画発信の取り組みについての事例紹介があり、「しゃべりはヘタでも良い」「ミスを気にしない」「周囲の人に応援出演してもらう」などの動画を撮るポイントのほか、SNSで動画配信を継続することで、見知らぬ人から応援の声がもらえ、信頼性が高まったなどの発信効果についてコメントがありました。
3.グループによる意見交換
その後、約20の出展ブースをめぐる試食・販売交流会をはさんでグループによる意見交換を行い、班ごとに全体で発表を行いました。各班で出た意見には以下のようなものがありました。
<1班>
1班では、「ちーびず防災の備え」講演をいただいたカスタネットの植木さん、この8月からきくらげを使った商品化をはじめられ、ちーびずの話を聞いたばかりの健康倶楽部の梅田さん、猫も人間も食べられるねこ缶を商品化された丹後プレミアムねこ缶プロジェクトの廣瀬さん、京都ちーびず推進員であり「レストこのしろ」で海の見える食堂を運営し、地域の拠点として拡げていこうと活動されている平井さん、そして地域力ビジネス課の堀口さんと診断士の藤井の6名でした。
アイスブレイクを兼ね、それぞれの参加者の自己紹介がまず行われました。その後各自のちーびず活動を通じた「ここが楽しい!」という点に焦点を当て意見交換がなされました。
ちーびずの魅力、楽しさという点では、「なんといっても"つながり"がつくれること」「こうしてこんな場で色んな方々とお知り合いになれて情報交換できること」「企業のように営利事業ではなく、お互いに助け合うことができ、ノウハウを開示したりもできることが素晴らしい」「地域の人々がそれぞれ自分の持っている力を合わせて、一緒になって地域おこしに貢献できるということ」「出る杭は叩かれることもあるが、出過ぎる杭になるように頑張りたい」など、様々な意見が出されました。
<2班>
2班では参加者が各々の活動を紹介し合いながら、「ちーびず」活動を通じて楽しかったことや良かったことなどを共有し合いました。「いろんな分野の方と出会えたのが楽しかった。」「交流会では他社の活動を知ることで多くの刺激を得られた。それが自分たちの活動でのアイデアにつながってる。」「出会いから商品のコラボが生まれた。」など活発な意見交換がなされました。なかには「新たな商品の開発の瞬間に遭遇しました!」と興奮交じりに語ってくれた参加者もいました。人との「出会い」や「つながり」を通じて新たなアイデアや活動が生まれていく・・・そんな現状を改めて感じた交流会でした。
地域には様々な課題があります。今まで関わりのなかった人たちが、地域の資源を活用しアイデアを出し合いながらその課題を解決していく・・・そんな活動の中で地域の課題に関心のなかった人達もまた新たに関心をもってくれるでしょう。そんな好循環が生む活動の応援が「ちーびず」だと改めて感じさせてくれた瞬間でもありました。「地域の課題を解決するのは難しい。けれど楽しみたい。工夫しながら、楽しみながらやっています。」という参加者の一人の言葉が印象的でした。今後も楽しみながら様々な交流を通して、活動がさらに活性化することが期待されます。
<3班>
ささゆりグループ(福知山市)では、10人程度の女性(最高齢85歳)で活動しており、江戸時代から作られている山ふぐ(さしみこんにゃく)の生産・販売をこんにゃく芋の栽培から行っています。手作り市などに出しているが人気があり、半分が事前予約。手間暇をかけるぶん生産量に限界があり、生産拡大のモチベーションづくり等が課題です。現在300円で販売しているが、商品に特徴があり、都市生活者に対しては価格アップも可能(500円程度)と考えられるという意見が出されました。現在は楽しみながら伝統食品の伝承を続けているというやり方であるが、工賃のアップや真空パック機更新費用の確保等も考えながら、生産・販売の拡大を考えていくべきではとの意見も出されました。
京丹後リーフ(京丹後市)は、パパイヤの機能成分と獣害への強さ、農作業の少なさに着目し、耕作放棄地の有効活用として、パパイヤの栽培に取り組み、京都産パパイヤ茶「極」を生産し、各種イベントに参加するなど販路拡大にも尽力しています。便通など健康増進によいとのことです。
最近地域カフェを始めた特定非営利活動法人東九条地域活性化センターは、市営住宅の1室を借りてコミュニティカフェ等を運営しているため、固定費負担が大きいです。昼は10名程度の女性客が集っていますが、夜は酒類を提供して売上の確保に努めています。
郡部のちーびずグループと京都市内のちーびずグループが連携すれば、一方は京都市内の地域生活者へのアピールを高めることが出来、他方は京都市内にない魅力・話題性を提供し、顧客拡大を図ることが出来るのではとの意見が出されました。
<4班>
4班の参加メンバーはふくちゃん、お母ら工房、NPO法人グローカル人材センター、京都ちーびず推進員、京都府地域力ビジネス課、中小企業診断士の6名でした。ふくちゃんは衣服をリフォームする中で仕事を請け負うのではなく、ワークショップ等で地域の方に参加していただく活動を18年度から行っています。お母ら工房はちーびずとしての歴史は長く、地域で廃棄される半端ものの野菜を有効活用する活動などを行ってきました。NPO法人グローカルセンターは大学と地域をつなぐ仕事をする中でちーびずと関わり、ちーびず推進員は様々なちーびず団体の支援をしながらFM舞鶴の番組も持たれています。各種各様の歴史や活動のフィールドを持つ中で、ちーびずの「楽しい」とは何かについて議論をしました。地域課題の解決をビジネスとして行うちーびずならではの視点として、楽しく取り組むことが継続の原動力なる一方で、きちんと成果を出すことが楽しさの源泉ともなる、という意見が出ました。応援カフェなどの場を通じてちーびず団体同士がつながることがコラボの創出や新しい事業のアイデアを得るきっかけにもなっているとの意見も出ました。
<5班>
5班の参加者は、ちーびずが始まった当初から活動しておられる方、今回初めての参加の方、また男性も女性半々、年齢層もバラバラの多様なメンバーで構成されるグループでした。
楽しくないと続かない、その楽しさって何だろうということを深めていく議論を行いました。地域内で活動しているからこそ外のことを知って、他の地域との違いがあるからこそ新しい発想が生まれるということ、そこに楽しさがあるということが共通の思いです。お年寄りだからやってあげるんじゃなくて、お年寄りも必要とされる存在として活躍してもらえる場がある方が長生きできる、少額であってもお金を払うからこそお互いに遠慮しすぎずに暮らしの助け合いも継続できる、そしてやっていることは違っても地域課題について話したりする交流や情報提供をできるのが楽しい!ということに落ち着きました。
さらに、都会や若者との交流機会も地域にとって必要なものであり、そこから新しい知見も入ってくるので、ちーびずでも若者が重要な存在という認識も共有できました。
<7班>
各自よりそれぞれの地域での活動内容と自己紹介の後に「ちーびず、ここが楽しい」をテーマに話合いました。
ちーびす応援カフェでのお互い顔の見える会話は、信頼がもてるようになります。参考となる意見を聞くことができます。人と人の繋がりを広めていくことができます。そこからいろいろ「楽しいこと」が始まるのだという意見でした。
個別に良かった事例では「作り手の気持ちがわかってよかった。」「小冊子記事をみて自分たちもこのようになりたいと思えた。」「他グループの活動からいい影響が得られた。」「価格設定に困っていたときにアドバイスが得られた。」「気楽な繋がりが得られた。」などがありました。活動内容を通じてのつながりを話し合って、ちーびず活動の良さを認識できる話題で盛り上がりました。
4.終わりに
最後に、応援カフェ全体をふりかえり長友理事より講評と閉会の挨拶がありました。応援カフェを通じた場づくりが様々なちーびず団体のつながりをつくり、これからも、各団体が「楽しい」を実践することでビジネスを通じての社会課題解決であるちーびずが継続することを期待する、とのメッセージがありました。ちーびずを通してつながることで、今後のますますの各団体の活躍が期待されます。
【文責】
(全体)松下 晶(一般社団法人京都府中小企業診断協会、以下同様)
(グループ意見交換)1班:藤井 健志、2班:鬼頭 靖彦、3班:金田 修、4班:松下 晶、5班:阪本 純子、7班:橋本 浩司