京の起業家 No.27
京都商工会議所よりご紹介をいただき、京都市左京区で2019年2月に放課後等デイサービス「bridge」を開業された合同会社 mock up の松浦雅衛様にお話を伺いました。
合同会社mock up代表
松浦 雅衛 様
美術系の大学を出てアパレルメーカーに勤務した後、成人の就労支援や相談支援事業を行う施設で約9年、児童向けの放課後等デイサービスを提供する施設で3年程度勤める。
2019年2月に放課後等デイサービス「bridge」を京都市左京区で開業。
平日の放課後と祝日の日中に、6歳から18歳(小学1年生から高校3年生まで)のハンディキャップを抱えたお子様を対象として生活能力向上と社会参加のためのプログラムを提供しています。健常児と違い部活やお店、行事などへの参加に制約があるお子様が、工作や料理、運動やお出かけなどの活動を通じて成長し自立できるようサポートしています。
登録されている利用者は小学生と中高生が半々で、状況も軽度から重度までと様々ですが、当施設のこだわりとしては1日10名までの利用に対して常に4名以上のスタッフを配置して、お子様ひとりひとりに目が行き届くような体制で運営させていただいています。
当施設を開業する前は、美術系の大学を出てアパレルメーカーに勤めていたのですが、たまたま福祉業界にご縁があり、成人の就労支援や相談支援事業を行う施設で約9年、児童向けの放課後等デイサービスを提供する施設で3年程度勤めました。
その後、起業を志しました。きっかけは自分の子どもにも障害があり、子どもを通わせる施設を作りたかったこと、もうひとつは、営利企業の目線では効率と利益重視に偏りがちな福祉業界で、持続可能な経営をしつつも理想的な福祉を実現する施設を作りたかったことです。
テナントを探すにあたり、福祉・介護系の事業は賃借が不可という物件が多かったため、当初希望していた立地では見つかりませんでした。不動産会社やインターネットの不動産サイトをこまめにチェックして問い合わせをし、だんだんとコツもわかってきて4か月目にようやく今の事務所を見つけることができました。
また、福祉施設として行政の許認可を受けるにあたり、児童指導員や児童発達管理責任者の資格を保有している人の雇用が必須であることもあり、人材の確保にも奔走しましたが、知人の紹介で運よく比較的短期間で雇用することができました。
起業を思い立ったときに、業界や仕事のことはわかるけれど施設立上げにあたってのお金のことや手続きのことなどをどうすればいいのか見当もつかなかった状態で、ペット関係で起業した知人からおすすめをされたのがきっかけで、京都商工会議所に電話をして相談をしました。その後、通い詰めながらアドバイスをいただき、日本政策金融公庫での借入のための事業計画作成、特定創業支援事業での登録免許税の優遇及び法人設立にあたっての司法書士の紹介など様々な局面でお世話になり、今後も末永くお付き合いさせていただきたいと考えています。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、当施設は社会インフラとして受け皿になる役割を求められました。2020年の春に小学校が一斉休校となった際には、平日でもお子様を朝から受け入れることができるよう体制を整える必要があり、学生アルバイトなどを急遽確保して対応しました。2回目の緊急事態宣言で小学校が休校にはなりませんでしたが、アルバイトもさらに増員し、感染対策等もしっかりと行い、運営状況は落ち着きを取り戻しています。
将来、日本では子どもの数が減っていくと思われます。そのため、子どもがメインの放課後等デイサービス以外の事業にも対応せざるを得ないと感じています。
例えば、今ご利用いただいている子どもが大きくなられてから成人の就労支援としてもご利用いただく、また、児童および成人の居宅介護などの分野にも進出する、などの展開を想定しています。新たな許認可も必要で容易な道ではありませんが。
現在、私自身も放課後デイサービス施設の運営と兼務して1人の障害児専門の相談支援専門員(いわゆるケアマネ)としても活動しており、無理の無い範囲で事業を多角的に展開していきたいと考えています。
あまり無責任なことは言えませんが、もし会社員として納得がいかないことがある、モヤモヤを抱えている、のであれば、「やってみた方がいい!」と思います。
私は創業してから2年間様々な困難に直面しましたがスタッフや周囲の方々の助けを借りて、常にやりがいを感じながら事業をさせていただいています。「今が一番楽しい!」と自信を持って言えます。
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【京都商工会議所 経営支援員 古賀氏より】
前職の経験により、創業前の準備を地道に重ねてこられたことが、開業直後から業績をあげられた理由だと思います。この事業に対する理念が利益目的でなく、あくまでも子どもたちに対する奉仕の考えであり、それに共感した従業員も一緒に頑張っておられます。今後のビジョンである「居宅介護分野へ進出」を成功させるために、松浦代表社員がこれまでの経験を活かし、今後益々、地元に愛される企業へと発展されることを切に願っています。
(取材:松下 晶)
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