京都府商工会連合会よりご紹介をいただき、京都府福知山市で万願寺甘とうの生産・販売を中心とした農業事業を経営する株式会社Seasonの代表取締役久保世智(くぼ ときのり)様にお話を伺いました。
弊社の事業は、万願寺甘とうの生産・販売を中心とした農業です。万願寺甘とうの生産規模は年々拡大しており、現在は露地栽培の6反とビニールハウス3棟で、合計70アール程度の農地で栽培しています。
開業の経緯としては、前職の、大阪のWebコンサルティング会社で在職中に独立したいという漠然とした思いがあり、農業の指導をいただける方と知己を得たことをきっかけに当時の同僚の松村とともに開業しました。
農業を選んだ理由は、食が我々の生活に欠かせないものであり、美味しい食材は日常を豊かなものにするという「ワクワク感」があり、また、地域の衰退や食糧危機という課題解決への手段ともなる「世の中の役に立てる」という側面に魅力を感じたためです。
開業当初は亀岡で3年ほどにんにくやトマトを生産していましたが収入が安定せず、その後万願寺甘とうに出会い、収穫期間の長さ(露地は6月~11月、ハウスは5月中旬~12月)、病気への強さ、価格の安定性、京野菜としてのブランド力などに可能性を感じ、福知山で本格的に取り組むことにして現在に至ります。現在のSeasonは2014年に万願寺甘とうに取り組み始めたタイミングで任意団体として立ち上げ、2017年に株式会社化したものです。
人材確保について試行錯誤の結果、独自のノウハウを確立しました。万願寺甘とうは果菜類で一つの株から約半年の収穫期間中に多くの実がなり、収穫に人手を要します。当初は地域で人材を探すも少子高齢化等により思うように見つかりませんでした。そのため、「WWOOF(ウーフ)」というプラットフォームを活用して農業体験をしたいゲストをフランスから招いたところ一定の手ごたえを得ました。
そこで本格的に外国人人材を活用したいと考えていた矢先に、台湾でワーキングホリデー(以下ワーホリ)のあっせんをしている知人から紹介を受けることができ、ようやく安定的に収穫することができるようになりました。
以降、ワーホリOBにも協力してもらい、継続的に台湾・香港からワーホリ人材を受け入れることができるようになり、2016年から始めてこれまでにのべ30人程度のワーホリ人材を受け入れています。一人当たりのワーホリ期間は平均で3~4か月のため、繁忙期に合わせてタイミングよく来てもらうよう調整ができています。
また、生産性向上のため株の並べ方や支柱の素材など、様々な点で常に改良するよう心がけています。
近年農業分野ではITの導入も活発で、弊社としてもIoTユニットを活用した温湿度などの環境変数の見える化や、ドローンの空撮マルチスペクトルカメラで撮影したデータをもとにした水不足、病害虫、収穫予測などの解析など、ビッグデータ分析を生産性向上につなげるしくみの導入も検討しています。導入・分析に関しては、市の産官学連携施設等を通じて地元の大学の研究室と連携する方向でも動いています。
小規模事業者持続化補助金を活用した販路開拓に関して、ご支援いただきました。万願寺甘とうは農協に出荷していますが、トマトやにんにくなど各種野菜の小口栽培や近隣農家から仕入れた農産物はレストラン等への直接取引もしており、これらに関して新しく引き合いをいただけるようになりました。
現在、ワーホリ人材の募集・受け入れを行ってきたノウハウを活用して農業に限らず人手不足の事業者を支援したいと考えており、人材紹介業の登録の準備をしています。
外国人の雇用というと技能実習などの制度が認知されていますが、ワーホリの制度は短期間の契約にも対応できる柔軟性などがあることから人手不足解決の有効な手段となると考えます。現在、人手不足でお困りの事業者からのご相談も随時受け付けております。
そして、将来的にはIoTやドローンを活用したビッグデータ分析等のノウハウを蓄積し、他の農業事業者の生産性向上支援などの事業を展開し、結果として農業生産・販売の割合を全体の3割程度までとするぐらいが理想的なバランスです。
さらに、台湾や香港のワーホリOB人材のネットワークを活用して海外での農業ビジネス立ち上げや、農業加工品の輸出などにもつなげていきたいですね。
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【福知山市商工会 経営支援員 西山氏より】
販路開拓について相談をいただいたのがきっかけで、昨年度商工会に加入いただきました。
株式会社Seasonさんはこの地域の特産品である万願寺とうがらしの栽培を中心に事業展開されています。
栽培工程のIT化による自動化推進、加工品開発にも積極的に取り組まれ、若いパワーで既存の「農業」の概念にとらわれない、事業者としての目線で熱心に経営に取組んでおられると感じます。
今後も新たな発想やアイデアで、事業がますます発展されることを期待しています。
(取材:松下 晶)
■ 株式会社Season |