ここ数年以内に起業された個人あるいは法人様を、診断京都の編集担当者が取材をしてご紹介するコーナーです。 創業のきっかけや創業後の取り組みについてお聞きしています。
桃井家（モモイエ）一級建築士事務所
京都商工会議所よりご紹介をいただき、京都市山科区で「桃井家（モモイエ）一級建築士事務所」を平成29年10月に開業された桃井康行（ももい やすゆき）様にお話を伺いました。
起業までの経緯を教えてください
大学卒業後、神戸で約6年、地場のゼネコンにつとめ、マンションを主として建築設計・施工管理の仕事をしてきました。一級建築士の資格を取得した際にアメリカの住宅産業を視察するツアーに参加する機会をいただき、それをきっかけに住宅の仕事がしたくなりました。その後、地元京都の建設会社に転職し、住宅を主としながら鉄骨や店舗などさまざまな案件を17年間させていただきました。
起業の動機は何ですか
父が印刷会社を経営しており、その後姿を見て育ったことが一番の理由です。学生のころからいつかは起業したいという思いはありましたが実現するタイミングを逸して会社勤めを続ける中、父が亡くなる直前に話をして「独立してだめでもまた勤めたらいい」と背中を押してもらったことで独立の決意をしました。会社に独立する意思を伝えると、あと1年半はいて欲しいと言われたため、円満退社が大切と考え平成29年の9月末まで引継ぎなどの対応をして退職、10月に起業しました。
事業の概要を教えてください
住宅、店舗、鉄骨マンションなどの建設業で、新築、リフォームや修繕など幅広く対応しています。当社が設計や施工管理を行い、施工を前職からのつながりで協働していた職人に外注しています。現時点で雇用はしておらず、二級建築士で広報の仕事もしていた妻が一部設計作業の補助やロゴ・HP・チラシ作成等に奮闘してくれています。
競合に負けないこだわりは何でしょうか
こだわりは「品質」です。一級建築士である私がお客様との面談から設計、施工管理まで一貫して担当しているために品質のばらつきは出ませんし、建築施工の外注先も前職からのつながりで信頼のおける協力会社に発注しており、絶対の自信を持っています。また、水回りの改修などお客様のちょっとした困りごとでも親身に相談に乗ることを信条としており、それがお客様からの信頼につながっています。
集客の工夫はどのようにされていますか
今の集客チャネルは100%、知人からの紹介です。経営者の交流会や、町内の行事、同窓会などに積極的に参加して人脈を広げています。その際にも売り込みをかけるのではなく、近況を語るなどして関係性を深めることを心がけています。実際に受注したお客様の満足度も高く、そこからの紹介というのも少しずつ増えています。地道に人脈を広げた結果、創業半年で当初計画の4倍の売上を達成しました。想定以上のお仕事をいただき繁忙を極めたのですが、遠隔での現場管理など、外注先の柔軟な対応により業務をうまくまわすことができました。
商工会議所からはどのような支援を受けましたか
最初は独立前に参加した創業塾からのご縁でした。塾での学びや塾生同士で刺激しあったことは非常に大きく、今につながっています。また、卒塾後、経営支援員の野村さんに個別にご指導をいただき、特に創業計画書を細部までチェックいただき練り上げることができました。おかげさまで運転資金の融資は問題なく通過し、また、今でも創業計画書を見返して動機やビジョンなど創業時の思いをふりかえる資料とさせていただいています。
これからのビジョンや課題を教えてください
創業して約1年が経過するタイミングで、これまでのふりかえりと来年以降の中期計画を経営計画書という形に落とし込み、経営者の交流会で発表することを予定しており、検討に着手しているところです。
今年度の売上構成としては住宅、店舗、鉄骨マンションがそれぞれ3分の1ずつですが、将来的には住宅に特化したいと考えています。そのためにも人脈中心の営業スタイルから、HPやブログ等も活用できるよう集客媒体を充実させていきます。また、2～3年後までには雇用をするために情報収集を開始しており、また、その前段階として来年春までに自宅とは別に事務所を構える予定で、物件を探しています。
2020年の東京オリンピック後に建築業界の状況は一変することが予想されるため、それまでに確りと足場固めをしておきたいと考えています。
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【京都商工会議所 経営支援員 野村氏より】
創業前の準備を早い段階から地道に重ねてこられたことが、開業後の順調な業績に直結していると思います。特に、販路に関する人脈形成の努力だけでなく、前職で17年にわたって誠実に仕事をしてきたことが外注企業や職人さんとの関係性を強くし、供給（建築）側の人脈として上手く機能していると思います。
これから先、従業員の雇用や規模に合わせた法人化など多くの計画をお持ちですが、これまで桃井さんご自身が積み重ねてきたものを信じて、頑張って頂きたいと思います。
（取材：松下 晶）
会社情報
桃井家（モモイエ）一級建築士事務所 |