京都商工会議所よりご紹介をいただき、京都で飲食店「おうちごはん中島家」を平成25年7月に起業され、平成29年7月には、2店舗目となる「京町家おばんざいこはく」をオープンされたオーナーの中島健介様にお話を伺いました。
独立を決意したのは、最初に約3年間勤務した飲食店で店長をうまく務められず、辞めることになり、悔しい気持ちをバネに、せっかく飛び込んだ飲食業の世界で成功することを目標として掲げたのがきっかけです。
そのため、次にご縁があった飲食店では当初から起業を前提として勤務することを伝え、料理の腕を磨くため、料理人として働き始めましたが、むしろホール対応のセンスをオーナーに見出され、店長を任されました。平成24年ころから起業に向けて具体的に動き出し、パートナーとなる料理長のスカウトや物件の選定など準備を進め、おおむね当初の想定どおり3年勤めた後、念願の独立を実現しました。
起業の約1年前に京都商工会議所の窓口に「独立したいが何もわからないので教えて欲しい」と相談に訪れ、そこから定期的に通い、経営のイロハを指導いただきました。
事業計画作成を通じたターゲットとするお客様の設定やビジョンづくり、経営目線での数字の見方、組織づくり、店舗立地選定の考え方など経営全般についての指導や、創業補助金の申請サポートなどで大変お世話になりました。
起業当初はとにかく働き通しで休みも取れず、体力的にもかなり厳しいところまで追い込んで仕事に打ち込んでいました。売り上げが順調に伸びるまでは料理長とは6畳1間に二人で生活を共にし、24時間、生活でも仕事でも顔を合わせていましたが、それも今となっては良い思い出です。
お店のコンセプトは「お客様にとってお店がおうちであり、スタッフが家族であるようなあたたかい場所」です。店舗の立地選定時にはそのコンセプトに沿うように、1店舗目は繁華な場所から離れた比較的静かな住宅街を選びました。
当店が得意とする、お野菜中心のおばんざいは、昨今、和食や健康志向が注目されていることもあり高い評価を受け、Web上の口コミ情報で観光のお客様も増えています。
当店の野菜は、実家の畑をはじめ、農家から直接仕入れています。鮮魚類についても、料理長が市場で仕入れるほか、浜から直接仕入れることもあります。特に、食材にはこだわっており、新鮮で、季節感のある素材をお客様に喜んでいただける調理法で提供しています。
一方で、近隣に住まわれる方との関係も大切に考えており、ごみ拾いや運動会やボーリング大会など地域の行事にスタッフ全員が参加することで、地域に密着したお店となるよう心がけています。おかげさまで、近隣の方のご利用も大変多いという状況です。
なお、集客にはインターネットも活用しています。ぐるなびや食べログにお金をかけることはせず、PPC広告への出稿や、SNSでのつながりを活用して集客する仕組みを構築し、広告費がおさえられ、かつ、高い集客成果が出ています。
これまでの店長経験を活かし、経営にあたっては「人の才能と情熱を活かして人が輝く組織づくり」を心がけています。具体的には、お店のコンセプト、提供メニュー、集客施策、スタッフの行動計画等を考えるにあたり、判断基準は「スタッフが才能と情熱を注げるか?」が、一番に来るということです。そして、市場の将来性や自社の強みをふまえたうえで、日々意思決定しています。
人材の育成もトップダウンではなく、経営者が縁の下の力持ちとなりスタッフを支えるいわゆる「サーバント型リーダーシップ」を心がけています。また、性格診断等のツールを用いて分析したスタッフの適性に基づいたコーチングを行い、スタッフの行動計画に落とし込みます。実績評価も結果ではなく行動が基準となります。
結果として、スタッフは活き活きと働き、そんな職場を見てここで働きたい、という声をいただくことも多いです。2店舗目をオープンするにあたり新規雇用した2名の女性社員を含め、これまで採用したスタッフ、アルバイトは全て知人やその紹介、お客様であり、あらかじめお店のことを知っていただいているため採用後のミスマッチもありません。
「おうちごはん中島家」としては、もう1店舗増やして直営3店舗体制とし、当社を「人が育つ場」としてますます発展させることを目標とします。経営者としては、他の飲食店のコンサルティングやスタッフの独立支援など、人がワクワク働ける場を増やすことで、社会が活き活きとすることに少しでもお役に立ちたいと考えています。
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【京都商工会議所 経営支援員 山口氏より】
中島さんは、創業準備中から熱心に当所を活用くださり、開業してからこれまで常に進化してこられました。中島さんの明るく温かい人柄がスタッフに伝わり、スタッフ全員が、お客様を家族のように接するおもてなしに心も温かくなります。また、料理は旬の食材を用い、料理長自慢の一品にお客様との会話も盛り上がります。これからも夢の実現に向け、頑張っていただきたいです。
(取材:松下 晶)
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