ここ数年以内に起業された個人あるいは法人様を、診断京都の編集担当者が取材をしてご紹介するコーナーです。 創業のきっかけや創業後の取り組みについてお聞きしています。
京都商工会議所様よりご紹介いただき、平成25年1月に右京区西院で創業され、「困ったときに思い出してもらえる電器店」として地域に根差したサービスを展開されているAZUL(アズール)電器の代表 南智彦様にお話をお聞きしました。
もともとは家電の修理を、その後、習得した技術を活かして電気工事の仕事をしていました。以前、この店では他の電器店が営業されていたのですが、お店を閉められるということで、この場所で店を持たないかと仕事関係の方から紹介されました。私はお店を持つことを考えておらず、経営していけるかどうか迷いもありましたが、妻の勧めがあり開業することにしました。
AZULは、スペイン語で紺碧のブルー、ロゴ・看板もAZULカラーを使っています。もう一つの意味は「AZ」はAからZで最初から最初まで、UはUser=お客様、LはLongなので、「最初から最後までお客様と長いお付き合い」という思いを込めています。
最初はすべて自己資金で事業をスタートさせました。その後、事業が広がったことから、資金繰りの改善のために融資を受けるよう税理士にアドバイスをいただき、商工会議所に相談するようになりました。商工会議所からはマル経融資(日本政策金融公庫の小規模事業者経営改善資金融資)や小規模事業者持続化補助金の申請のために経営計画の作成支援を受け、今でも販路開拓に関する支援の情報をいただいています。
お客様、業者とのつながりも全くないゼロからのスタートでした。当初は住所を見ても位置関係が分からず、地図を片手に家を一軒一軒回ることから始めていきました。その訪問ツールとして当店が取り扱う商品、サービスを紹介する「AZUL新聞」を作成しました。その後、知り合いの方を通じて「私も新聞が欲しい」と言っていただける方の声が届くようになり、現在、店の入口2か所に設置して自由にとっていただいています。しかし、創業1年目は大きなお仕事をすることがなかったため、正直続けられるかどうか不安でした。
そんな中、他店で「修理できない」と言われ、家電製品の買換えを検討されていたお客様からのご依頼で私どもが故障した家電製品を修理したところ大変喜んでいただきました。その後、そのお客様の紹介により「この家電製品を修理して欲しい」「家電製品の入れ替えにアドバイスが欲しい」などの相談を受けるようになりました。こちらから営業をかけるわけでもなく、口コミで新たなお客様の輪が広がっていくことが実感でき、すごくうれしかったです。今では近隣のお客様からの紹介で、ご友人、お子様、ご親戚まで、幅広く引き合いをいただき、対応する地域も拡大しました。
創業2年目から3年目にかけては、お風呂やキッチンなどの部分的にリフォーム工事の相談を受け、自分たちでできない部分を大工や設備屋さんにお願いしたことで、他の業者とのつながりを作ることができました。そのつながりで、逆にお仕事の依頼をいただくこともあります。
今では、工事でも修理でもない、お困りごとの相談も多いです。電球の取り換えから、畳をフローリングに代えたり、トイレや、部分的に床を修理したりという少し大工的な仕事もしています。困ったときに思い出していただける電器店でありたいという思いが一番ですね。
「AZUL新聞」は毎月手書きでその月に応じた内容で作成し、裏面に工事事例を写真で見せ、金額も入れています。発行を楽しみにして下さっているご近所の方も多いです。ホームページからの問合せも多いですね。様々な事例のビフォー・アフターの写真を掲載していますので、お困りごとの検索でヒットするようです。それを見て見積もりのご依頼をいただくこともあります。分かりやすい保存版の見積もり表も配布しています。
創業当初は売上目標よりもお客様とのつながりを一軒でも作っていきたいという思いで事業を進めました。今の目標は法人化です。当社のスタッフにも資格を取得してもらって、修理でも工事でも家電製品の販売でもお客様に満足していただけるよう、さらに力をつけていきます。また、いくつかチームをつくって同じ日に複数の依頼先を回れるようにしたいですね。工務店や共同経営されている方と連携してチームを作って動けるようにしたいなと思います。最終的にはAZUL電器で家が一軒建つような事業を展開することです。工程ごとに別の業者ではなく、「AZUL電器」にすべてお任せしていただける体制をとっていきたいです。
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京都商工会議所 経営支援員 I氏よりひとこと
私自身も「AZUL新聞」をいつも楽しみしています。技術の高さはもちろんのこと、創業当初より地域のお客様や取引業者様を大切にしてお仕事をされている姿勢、売って終わりではなく家電製品の設置から取扱の説明まで丁寧かつきめ細かなサービス、お困りごとのご相談対応でお客様に喜んでいただいていることが、地域に根付く電器店としていくことにつながっているのだと思います。今後も販路開拓へのご支援など状況に合わせた必要な情報を提供していきたいと思っております。
(取材:阪本純子)
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