ここ数年以内に起業された個人あるいは法人様を、診断京都の編集担当者が取材をしてご紹介するコーナーです。 創業のきっかけや創業後の取り組みについてお聞きしています。
京都商工会議所様よりご紹介いただき、平成24年10月創業の味人(あじと)の代表 奥村武人さんにお話をお伺いしました。
創業時の事業計画書作成段階から、創業後の相談まで診断協会の診断士が支援しています。取材時には、創業支援を行った三木絵美・経営支援員も同席し、当時作成した事業計画書で創業時を振り返りながらお話しをすすめました。
私は、高校時代のアルバイトがきっかけで「おいしい」と喜んでもらえる飲食業に魅力を感じ、居酒屋に就職しました。
2年間従事し、いつか自分のお店を持つことが夢となっていたのですが、家庭の事情で、その想いを断念して一般の企業に転職し、広告の営業をしていました。
同僚などと居酒屋へ行くたびに、自分ならどういうお店にするだろうかと想像を膨らませるにつれ、飲食業への想いが募っていく、そんな14年間でした。
転機が訪れたのは35歳の時。飲食業界から離れて14年間のブランクに悩んでいましたが、料理人として働いている20年来の友人と、自分のお店を持つ夢を語り合ったところ、意気投合し、想い続けた飲食店開業へと一緒に踏み出しました。おかげで、会社を辞めてから1年2ヶ月で開店という早い展開でした。
起業前、広告の仕事をしていたので、新聞広告はいつも見ていました。
ある時、商工会議所の「創業支援セミナー」の広告を見つけ、参加しました。そこで、中小企業診断士の先生や日本政策金融公庫の創業支援センター長からの講義があり、創業を成功させるためのポイントから創業融資に至るまで分かりやすく教えて頂きました。
セミナー後の個別相談会では、作成した事業計画書を基に、具体的なアドバイスを頂きました。それから、創業融資までの間、診断士の先生や担当支援員からの助言を受け、かなり細かく、何度も書き直しをしました(笑)。
その都度、それが自分にあったものなのか自問しながら書き直していったので、細かなところまで創業時のイメージができ、皆様には大変感謝しています。
売上見込などの定量面の計画についても、単なる数字合わせでなく、かなり現実に近いものを想像して作れたと思います。今でもこの時に作った資金繰り表を元に毎月実績の数値を入れて検証しています。
事業計画書の作成と同時に物件も探しました。創業や飲食関連の本には、物件探しに1年はかかると書かれていたので、早めに探し始めたのですが、全然見つからず苦労しました。
一度、別の物件で決めかけていたのですが、知り合いに声をかけて回った結果、テナント募集が出る前の物件を紹介してもらうことができ、今の場所を見つけました。
店舗入口がうなぎの寝床のように間口が狭く奥行が深いことから、お店の名前は、味にこだわった隠れ家的なお店として「味人(あじと)」と決めました。
基本的に販促はしていません。個人経営の飲食店には、販促費の捻出はかなり厳しいと考えています。
クーポンで来店するお客様は続かないと言われているので、地道に頑張ってお客様が増えていくのが理想と考えています。
唯一、ホームページの代わりに、食べログの有料ページを使い、料理写真などのアップをしています。
販促費をかけない分、「味」と「値段」で勝負しています。魚のお造りには特にこだわっていて、正直利益はあまりないです。販促費を使わない分、料理の原価があげられるので、コストパフォーマンスが高く、お客様にも満足頂いています。
創業当初は数年後には2店舗目の展開を予定していましたが、人材不足のため困難な状態です。それもあって、飲食業界の人材不足を解決するための助け合いのネットワークが作れたらいいなと思っています。
このままでは良い店であっても人材不足で継続することができなくなります。当店にとって、今は足もとを固める時期だと思って今後の展開を練り直しています。
これからは店舗を任せることができる人を育てていきたいです。
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京都商工会議所 経営支援員 三木絵美氏より
奥村さんは「創業支援セミナー」の受講段階からビジョンをしっかりとお持ちでした。事業計画書の作成時も、こちらから提案や指摘をすると、すぐに考えて頂いて、対応も早かったです。14年間の会社勤めで培った人脈と、礼儀正しくきっちりとされた奥村さん自身の人徳と実行力が今の良い状況をつくっている要因になっていると思います。
「お魚がとても美味しい!」と知人から薦められたお店が、この味人さんでした。日本酒も揃っていますし、お料理が本当に美味しく、特にお造りがオススメです。
これからの暑気払いの時期に、ぜひお立ち寄り下さい。
(取材:阪本純子)
味人(あじと)
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